ノスタルジーを探して

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 アンドレイ・タルコフスキー監督の映画作品「ノスタルジア」を観たのは、2003年の頃だったと思う。
 この映画を観るまで、私がこんなにもイタリアの田舎に導かれるような旅をし始めることになるとは予想だにしていなかった。まさにこの映画があったからこそ、ウンブリアのサン・セポルクロやマルケ、トスカーナに憧憬を抱くことになったのだ。それまではケニアやエジプトなどの北アフリカの原始美術に夢中で、東はインドのマトゥラーやカンボジアのクメールなどの中央~東アジアの美術に強く引かれ、実際に旅をした。カンボジアのアンコールワット遺跡群の中になるバイヨン寺院では、少しでも涼しい午前中のうちに遺跡にはいり、一生懸命スケッチをした。今にもスコールがくるのではないかと感じられるほど、飽和状態の湿度がmuse紙に染み込む絵具の邪魔をし、中々乾かなくて苦労した。今でもその薄塗りの水彩画作品は大切な思い出の作品となっていて、ときどき引っ張り出しては眺めている。(私は過去に描いた作品を滅多に見直すことがないが)
 少し話がそれてしまったが、「ノスタルジア」には恐ろしく多くの魅力的なキーワードやimageが盛り込まれている。しかも、それぞれが精緻にして卓越した監督の再現・構築力と、膨大な時間をかけて作りこまれたところに「永遠」と「死」の予告を観る者に伝える。聖カテリーナと慈悲の聖母、子供が欲しくて祈祷する女性たちと不思議な男性たちの言動、厳しいトスカーナの自然を高い湿度と濃霧の、ぼんやりとした中に感じさせつつ、しょうしょうとした無言の、しかし五月蝿いほどの雨のシーンからはロシアの凍土を彷彿させる。有名なラスト・シーンには一場面に主人公(アンドレイ・タルコフスキー自身の人生と夢の世界)の人生を構築しているimageによって構成されている。
 そのシーンの背景に使われているのが、最初の画像のSan Galgano(サン・ガルガーノ)修道院の、今現在の廃墟となった姿です。映画とは全く違い、からっと晴れた湿度の低い午後、太陽光線をむき出しになった煉瓦が一身に受け止め、なんともあっけらかんとした姿を見せていました。周囲にはがっくりと肩を落とす向日葵(ひまわり)畑が。盛夏にはさぞかし黄金色の美しい向日葵たちの笑顔を観ることができたことでしょう。向日葵の天真爛漫さと今にも音をたてて崩れ落ちそうなサン・ガルガーノの外壁のコントラストも魅力的でしょうね。しかし私が訪れたこの乾ききった向日葵と廃墟のコントラストからは、もはや遺跡と化した教会の真の力、そんな強さを感じさせるという逆転が起きているのではないか、と感じました。

 サン・ガルガーノの近くには小さな教会があり、元騎士だった聖ガルガヌスが平和のシンボルとして打ち込んだ剣が、岩に突き刺さった状態で保存されています。(説の信憑性はいかがなるものか、はさておき)左に続く礼拝堂にはアンプロージョ・ロレンツェッティの「玉座の聖母」を中心とした、壁全体に広がるフレスコ画があります。
 私がこの礼拝堂を訪れたとき、堂内ではミサが行われていました。その際に開帳されたであろう、ガラスケースの聖遺物がそのまま見えてしまいました。聖遺物には様々な形や様式がありますが、ここの聖遺物はその安置の仕方からいってかなり異様な雰囲気がありました。普段はヴェルヴェットの赤い布に覆われていて、一般には紹介していないようでした。



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夕日の中、シエナの街に戻るとパレードが。
沢山の女性と母子が幼児をバギーに乗せて、ドラムをガンガン鳴らしながらの大行進。
女性たちは「われらは狼の娘なり」(という意味だと思う)と声を上げる姿には、母の強さと女性たちの誇りに満ちた笑顔の美しさがありました。

夕焼けも終わりの夜7時半ごろ。やっと私たちは長い1日を終えることになりました。
画像最後で食べたピスタチオのニョッキは本当に摩訶不思議かつ美味な一品!
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真っ暗なか、キャンドルひとつというテーブルの演出だったので、おおっぴらにカメラを出すことは出来ず、、、しかしぴゃぴゃ!っと携帯で撮りました♪ピスタチオの爽やかな萌葱色が出ていなくて残念です。
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by nefeltahli | 2006-10-19 12:28 | イタリア トスカーナの休日

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